マイナンバーを集める・守る・出す。中小企業がマイナンバーで必要最低限やるべきことガイド

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マイナンバーに向けて準備を進めているケース、これからというケースがあるかと思います。
やるべきことはありますが、過度に心配して無駄ないお金を使わないようにしましょう。
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※オフィスにて。Sony α7

マイナンバーがもれたらどうなる?

企業や個人事業主が、従業員(パート、アルバイト含む)を雇っている場合、マイナンバー(個人番号)(以下「マイナンバー」)の業務が降りかかってきます。
※法人には、マイナンバー(法人番号)が振られます。

従業員のマイナンバーを集めて、守って、(役所に)出さなければいけません。

マイナンバーがもれた場合??

マイナンバーは、個人番号、氏名、住所(住民票登録)、生年月日、性別といった情報です。
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これがもれた場合どうなるのでしょうか?
氏名(本名)、住所、生年月日、性別といった情報が紐付けられてもれてしまいます。
場合によっては非常に困るでしょう。
ただし、これ以上の被害は想定できません。
・収入がばれる
・副業がばれる
・アルバイトがばれる
・借金がばれる
などといったことはないです。
【関連記事】マイナンバーでばれるもの・ばれないもの。税務署・会社・家族に、副業・貯金・借金はばれる? |EX-IT
リンク

ただ、今後、預金情報と紐付けられる予定(2018年。当初は任意)もあります。
その場合もマイナンバーがもれたからといって、すぐに預金情報がばれることはありません。
サイトにログインするパスワード、ICカードがなければ情報を見ることはできないのです。

クレジットカードのように、その番号がもれたらすぐに被害がでるものでもありません。

会社が手間をかけて管理する意味

以前、Twitterで、福田峰之内閣府大臣補佐官(マイナンバー制度担当)に、こういう質問をして答えていただきました。
(期間限定でマイナンバーに対する質問に答えてくださった企画でした)
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やはり「マイナンバーだけでは何もできない」ということです。
(マイナンバーカードとは個人番号カードというICカードのことで、申請すれば2016年1月以降に発行されるものです)

今週の『東洋経済』にも、同じく、「これでどうやって番号を知られただけで、芋づる式に情報が取れるのか?取れるものなら、取ってみて欲しい」とインタビューに答えてらっしゃいました。

マイナンバーが住所、生年月日等がばれる可能性はあっても、個人情報が根こそぎばれることはありません。
それでも、厳重な管理を求められ、マイナンバーを正当な理由なくもらした場合、罰則が強化されました。
ただ、罰則に関係なく、「マイナンバーがもれた」となると、評判も悪くなりますし、世間や従業員からの信頼もなくなってしまいます。
罰則があるなしに関わらず、しっかり管理すべきでしょう。

「管理を民間に押しつけて!」といった風潮もありますが、会社として従業員の情報を厳重管理するのは当然のことです。
マイナンバー(個人情報)は確かに特別なものではあるのですが、これまでも個人情報は預かっているのではないでしょうか。
給料、職歴、住所、家族などといった情報が満載です。
これまでもきっちり保管していれば、これからも問題ありません。

マイナンバーのために無駄なお金を使わない

「マイナンバーのために〜」という詐欺や商法に気をつけるべきです。

・マイナンバーのために、特別なパーテーションが必要
・マイナンバーのために、特別なセキュリティソフトが必要
・マイナンバーのために、特別な管理ソフトが必要
・マイナンバーのために、特別なスキャナーが必要
・マイナンバーのために、特別なサーバーが必要
・マイナンバーのために、特別なPCが必要
・マイナンバーのために、特別なディスプレイが必要
・マイナンバーのために、特別な工事(オフィスの壁)が必要
・マイナンバーのために、特別なキャビネットが必要

といったことはありません。

昨日見かけたのは、マイナンバーを書いてもらった紙を読み取るスキャナーが25万円でした・・・。
もちろん必要な支出(マイナンバーを学ぶ費用、マイナンバーを管理するシステム)もありますが、何が本当に必要かを見極めましょう。

(もちろん、これまでの管理が足りなかった場合はそれなりの支出が必要な場合もあります)

こんな、マイナンバー用の封筒などいりません。
https://www.yayoi-kk.co.jp/yss/store/supply/mynumber-01/index.html

マイナンバーのために、中小企業が必要最低限やるべきこと

マイナンバーでやることは、
・集める(マイナンバーを従業員や外注先・家賃支払先から集める)
・守る(マイナンバーがもれないように管理する)
・出す(マイナンバーを書類とともに役所へ提出する)
です。

「守る」については、法律上、中小事業者(従業員100人以下。個人情報を過去6ヶ月のうち1日でも5000件以上取り扱っていない場合に限る)は、多少緩和されています。
今回は、中小事業者に限って必要最低限のことを取り上げました。

■集める

マイナンバーの利用目的を通知

マイナンバーを集める際に、その利用目的を通知しなければいけません。
通知すればいいので、社内のネット、書面、メールなどでも大丈夫です。

ーーーーサンプル—————————————————-

個人番号利用目的通知書

従業員 各位

当社は、貴殿および貴殿の扶養家族の個人番号を以下の目的で利用いたします。

① 給与所得・退職所得の源泉徴収票作成事務

② 雇用保険届出事務

③ 健康保険・厚生年金保険届出事務

④ 労働者災害補償保険法に基づく請求事務

⑤ 国民年金の第3号被保険者の届出事務
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厳密にいうと、健康保険や年金については、2017年からマイナンバーを利用するのですが、まとめて事前に通知しておいてかまいません。
初回に全従業員へ通知し、その後は入社手続きのときに通知すれば大丈夫です。
(就業規則に書くという方法もありますが、就業規則がない・あるけど実質機能していないケースも多いかと思います)

マイナンバーを集める

マイナンバーを実質的にどうやって集めればいいのでしょうか。

まず、「マイナンバーの意味」を考えるべきです。
マイナンバーは役所へ書類を出すためのものであり、会社はこんな危なっかしいものはいりません。
「役所へ提出するとき」までに集めておけばいいということになります。

マイナンバーを最初に役所へ出すのは、
1 2016年(H28)の1月以降に雇用保険の加入・脱退手続きをする場合
2 2017年(H29)の1月に法定調書を提出する場合
です。

「1 2016年(H28)の1月以降に雇用保険の加入・脱退手続きをする場合」は一応定められていますが、努力義務(やってほしい)となっています。
既存の従業員分は、出すようにはなっていないのですが、「お願い」ベースで、2016年に求められるに過ぎません。
まあ、いまだに曖昧です。
(健康保険・年金に関してもお願いがある予定です)

「2 2017年(H29)の1月に法定調書を提出する場合」は、確実にやってきます。
法定調書とは、役員・従業員の源泉徴収票(役員は年150万円超、従業員は年500万円超など一定の条件に該当する場合)や外注先・顧問先への支払調書などです。
ここで従業員のマイナンバーが本当に必要となります。
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2016年の年末までにマイナンバーを集めればいいとも考えられますが、その一括して集めるまでに退職者が出た場合、別途マイナンバーを集めなければいけません。
となると、2015年(H27)中に集めておくのが得策です。
その場合、年末調整で配布するこの書類(扶養控除等申告書)にマイナンバーを書いてもらうことになります。
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マイナンバーが入ると、厳重に守らなければいけない書類になります。
年末調整の書類はもともと個人情報満載なので、厳重に守るべきものなので、これまできちんと管理していれば、扱いはこれまでと変わらないといえば変わらないはずです。
厳重に守っていなかった場合はこの機会に管理体制を見直さなければいけません。

場合によっては、年末調整の書類(扶養控除申告書等)とマイナンバー集めを分ける方法もあります。
年末調整はこれまでどおり行い、マイナンバーは他のシステムを使う方法です。
これだとよりマイナンバーを守れます。

「扶養控除等申告書にマイナンバーを入れなくていいのか?」と思われるかもしれませんが、逆に「扶養控除等申告書にマイナンバーを入れなければいけない」という根拠はありません。
(私の見解です。個々の判断で行っていただければ)

※10月29日追記****************************************************************************
国税庁サイトにて、
・従業員との合意
・扶養控除等申告書の余白に
「個人番号については給与支払者に提供済の個人番号と相違ない」
「既に提供を受けている個人番号を確認した旨」
を記載
があれば、扶養控除等申告書にマイナンバーを記載しなくてもいいと公表されました。

http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/gensen_qa.htm#a19

記載しないことには当然合意するかと思いますが・・・。
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マイナンバーがないからといって書類の有効性が損なわれることはなく、別途管理した方がより安全です。
紙で保管しておくと、キャビネット・鍵、座席配置、パーテーションなどを無理に準備しなければいけなくなります。
もちろん、後述するPCのセキュリティは大事であり、「紙だから安全」とは言い切れません。

現状でマイナンバー管理システムは、詳細をまだ出していないところも多いのですが、例としてMFクラウドマイナンバーを挙げてみます。
(1人なら無料で、それ以上は人数によって課金されるしくみです。まだここに決めたわけではありません。MFはあまり好きではないこともあるので、別のところが有力です。)

ネット上のシステムから、社員へマイナンバー提供依頼のメールを送ることができます。
このときに前述した利用目的も通知できるのは便利です。
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社員側はメールを受け取り、リンクにアクセスすると、
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マイナンバーを入力し、後述する証明書(通知カード、免許証等)も添付できます。
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入力すると、会社側はデータを確認でき、OKであれば、承認するしくみです。
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この後は、連携するMFの給与計算サービスに取り込み年末調整ができます。
※ただ、MFの年末調整だと法定調書を税務署へネットで出せませんし、給与支払報告書もネット提出できません。
プリントアウトして郵送するとなると、マイナンバー入りの書類なので、神経を使います。
現実的にはCSV出力して別途専用ソフトへ取り込む方がいいでしょうね(freeeも同じ仕組みです)

または、システムが対応していれば、2016年1月に取得できる予定の個人番号カード(ICカード)をカードリーダーで読む取るのが楽です。
個人番号カードは、10月の通知カードを受け取ったときに入っている書類で申請すれば本人が受けとることができます。
(会社で一括申請できるようになる見込みです)

マイナンバーについて十分説明をしてもマイナンバーを集めることを拒否されたら、その拒否された旨を記録しておきましょう。
マイナンバーがないからといって何かが無効になることはありません。
ただ、書類を出す役所によっては、対応が異なる可能性もあるので、きちんとやっておくにこしたことはないです。

本人確認をする

マイナンバーを集めるだけではなく、本人確認をする必要があります。

本人確認とは、
・番号確認→10月に送られてくる通知カードで番号を確認
・身元確認→免許証等で本人であることを確認
の2つ、
または
・番号&身元確認→2016年1月に送られてくる個人番号カード(写真付きICカード)で確認
するものです。

前述したクラウド(ネット)を使えば、これらの書類を画像で添付できます。
この点も、クラウドを使うメリットです。

身元確認は、従業員の方で間違いがなければ(間違いがないことにすれば)、省略できるので、実質的には省略するかと思います。

本人確認の対象は、次の3種類です。

1 従業員、外注先・家賃支払先本人→本人確認必要
2 従業員の扶養親族→本人確認不要(従業員が責任を持って集めることとなります)
3 従業員の国民年金第3号被保険者(2017年以降健康保険・年金の扶養に入る場合)→本人確認+委任状

3の場合は被扶養者の委任状も必要です。

 

 

 

■守る

マイナンバー管理体制を確認する

中小事業者は、次のようなことを確認しておきましょう。

・マイナンバー業務のマニュアル、業務フロー、チェックリストを作る
・マイナンバーを扱う人を決める。その人が辞めたらきちんと引き継ぎをする
(できれば、責任者と取り扱う人を分ける)
・マイナンバーについての知識を身につける
・マイナンバーを使った記録をつける
(日付、使ったマイナンバー、目的など。例)1/31 源泉徴収票作成)
・使わなくなったら、マイナンバーを廃棄する、データから消去する

セキュリティを見直す

アナログ、デジタル双方でセキュリティを見直しましょう。
アナログで管理するなら、
・鍵付きキャビネットか
・不用意に置いていないか
・持ち出すときに注意が足りているか
・メール便、普通郵便で送っていないか
などを気をつけます。

デジタルで管理するなら、
・ルーター(ネットにつなぐ機器)のセキュリティは大丈夫か
・Windows・MacのOSはアップデートされているか(WindowsXPはサポートが終わっていますので使ってはいけません。。)
・PCはマイナンバー取扱者のみが使えるものか(共用のPCでマイナンバーを使ってはいけません)
・PCにパスワードロックはされているか
・PCが物理的に持ち去られないようにしているか
・ウイルス対策がされているか
・ファイアウォールが設定されているか(Windows、Macそれぞれで検索してみてください)
・USBメモリで不用意に持ち出していないか
・FAX、メールで不用意にマイナンバーを送っていないか
・ネットに関する正しい知識を身につけているか
・不明な送り主からのメール添付ファイルをクリックしない
などです。

「普通にやっているよ」という方も多いのではないでしょうか。

100%安全というものはありませんが、漏洩のほとんどは人が原因だったりします。
マイナンバーを取り扱う人すべての意識改善が大事です。
高額なソフトやシステムを入れたから大丈夫ということはありません。
【関連記事】ひとり社長、フリーランスの情報漏洩・セキュリティ対策 |EX-IT
リンク

 

 

 

■出す

マイナンバーを役所へ出す

3段階目として役所へ出します。
これもネットで提出するのがより安全です。
役所関係のネット提出は、使いやすさを犠牲にしているほどセキュリティが厳重になっています。
(もちろん、使う人の知識や意識が大事です)

・2016年
雇用保険関係

・2017年
法定調書(税務署へ)
給与支払報告書(市区町村へ)
社会保険(健康保険・年金)関係(ただし、70歳以上のみ)
というのが当面のスケジュールです。

マイナンバーを役所に出すために従業員へ出す

現状、マイナンバーは、役所に出すためにしか使えません。
従業員に源泉徴収票(マイナンバー入り)を出すのは、従業員が確定申告で役所(税務署)へ出すために使う可能性があるからです。
住宅ローンの審査や収入証明には、マイナンバー入りの源泉徴収票は使えません。

会社側としては、
・マイナンバー入りとマイナンバーなしの源泉徴収票を2種類作る
・役所以外にはマイナンバーを見えないようにして使うように、従業員へ通知する
・基本的に、マイナンバーなしの源泉徴収票を渡し、必要がある場合のみマイナンバーありの源泉徴収票を渡す(より手間もかかりますが)
・マイナンバーなしの源泉徴収票を渡し、確定申告の際は個々にマイナンバーを書いてもらう
のいずれかで対応しましょう。
法律上、従業員へ交付する源泉徴収票にマイナンバーを記載しなくても大丈夫です。
「マイナンバーなしの源泉徴収票を渡し、確定申告の際は個々にマイナンバーを書いてもらう」が最もよいのではないでしょうか。

(個人事業主の場合は、支払者である自分のマイナンバーを消すことも必要です)

外注先・家賃支払先への支払調書は、確定申告で役所(税務署)に出すことは法律で定められていません。
支払調書は添付しなくてもいいのですが、慣習で、外注先・家賃支払先へ送っていることが多いのです。
マイナンバーなしの支払調書を送るか、送るのをやめましょう。
マイナンバー入りで送ると、法律違反になってしまいます。

【関連記事】外注先のマイナンバー管理・支払調書作成。支払調書は支払先へ送らなくていい。 |EX-IT
リンク

 

 

 

まとめ

最後にまとめると、やることは以下のとおりです。

○集める
・利用目的の通知
・マイナンバーを集める
・本人確認する

○守る
・管理体制を確認する
・セキュリティを見直す

○出す
・書類を作り役所へ出す
・役所に出す可能性がある書類を従業員へ渡す

めんどくさく、手間のかかることですが、早めに着手し、最初に全従業員のマイナンバーを集めるところを乗り切りましょう。

 

 

 





【編集後記】
昨日は午前中に歯科へ。
日曜日から歯が痛んでいたからです。
結果としては親知らず。。他の部分の治療も合わせて近いうちに抜きます。

午後は、マイナンバーセミナーを開催(メルマガ『税理士進化論』読者限定)。
ここ数ヶ月考えに考えた結果をお伝えしました。

【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」

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