利潤を時間と交換する。『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』より

ふと見つけた『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』という本。
パン好きなこともあり、なにかピンときて読んでみたのですが、予想以上におもしろい本でした。
今後のライフスタイル、ワークスタイルの参考になります!
腐る経済

 

腐る経済、腐らない経済

タイトルは、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』

本を読む前は、「腐る経済」・・・なんだろ?今の経済のことをさしてるのかな?と思っていました。

しかし、実は逆だったのです。
今の経済は「腐らない経済」。
もともと万物は腐るはずです。腐らないという状態こそがおかしいといえます。

パン屋で働いていた著者は、農薬や着色料を使った「腐らないパン」を見てきました。
その結果、『腐らない」ことはおかしいことではないか、「腐らないおカネを使っている資本主義」はおかしいのではないか?と考えるようになります。

右肩上がりを目指し、利潤を追求し、そのために労働力である人が搾取されていく・・・マルクスの考え方もまじえながら、

食と職の豊かさや喜びを守り、高めていくこと、そのために非効率であっても手間と人手をかけて丁寧にパンをつくり、「利潤」と訣別すること。それが、「腐らない」おカネが生み出す資本主義経済の矛盾を乗り越える道だと、僕は考えた。

と、現状の「腐らない経済」に対して、「腐る経済」、ちいさくても本当のことをする生き方、働き方について書いているのが本書です。

著者の渡邉格さん家族は、岡山県真庭市勝山で、タルマーリーというパン屋をされています。
(震災前は千葉だったそうです)
なんと、

店の経営理念は、「利潤」を出さないこと

とのことです。

 

 

利潤の犠牲

効率を上げて、利潤も上げるのは、みなが目指すところです。
しかし、いきすぎた効率、利潤は、何かを犠牲にせざるを得ません。
その犠牲は、仕入先だったり、従業員だったり、ときには自分だったりするわけです。

フリーランス、ひとりで仕事をしている場合、自分を犠牲にしないように気をつけなければいけません。
「好きでやってるから」
「しかたない」
という気持ちや不安から、ついつい自分を犠牲にして利潤を追い求めてしまいます。

もちろん、利潤がなければ、事業を続けることはできません。
必要以上に追い求めないということです。

ましてや利潤ではなく、売上アップだけを求めるのは論外です。
売上を上げて、固定費が増え、固定費をまかなう利潤がふくれあがれば、相当な犠牲を払わなければいけなくなります。

「利潤」を出さないということは、誰からも搾取をしない、誰も傷つけないということ。

必要以上の利潤とうまく訣別すれば、生き方・働き方も変わってきます。

 

 

利潤を時間と交換する

では、利潤と訣別すると何が手に入るのでしょうか。

得られるはずの利潤は時間と交換できます。
その時間を、他のことに費やすことができるのです。

本書でも、

パン以外のものに触れるこうした時間が、職人としての感性を磨き、人間としての幅を広げ、奥行きを深め、見聞を広め、社会の動きを感じとる目を養っていく。
今以上のパンをつくるために、パンをつくらない時間が必要だと思うのだ。

という表現があります。

「今以上の仕事をするために、仕事をしない時間が必要」
といえるでしょう。

パン屋「タルマーリー」は週3日休みで、1ヶ月の長期休暇があるそうです。
この空白の時間が、よりよいパン作りに大きく貢献しているのは間違いありません。

「毎日休まずパン作っています!」
というのと、
「週3日休んでいます!」
だと、私は後者のパン屋に行きたいです。

※実はこの本を読んだ後、タルマーリーに行く計画を立てました。
今週の火曜日と水曜日ならいけなくはなかったのですが、定休日(T_T)
次のチャンスを狙います。

利潤を時間に変えれば、税金もかかりません。
利潤は後からでも作れますが、時間は取り返せないものです。
利潤を追求しすぎなければ、嫌な仕事をしなくてすみます。

利潤ありきでない今後の働き方について、参考になる本です。

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

渡邉 格 講談社 2013-09-25
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by ヨメレバ