「社長が嫌なことは社員にもさせたくない」ー『私、社長ではなくなりました』を読んでー

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先日、発売されたばかりの『私、社長ではなくなりました』を読みました。
2011年3月30日に、負債総額40億円で民事再生法の適用を申請したワイキューブ。
当時の代表取締役の安田佳生さんが書いた本です。
安田さんは、『千円札は拾うな』の著書でも知られています。
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自分が嫌なことを社員にさせられるか

著者の安田さんは、一時46億円の売上を誇ったワイキューブがなぜ民事再生法適用となったのか?を本書で語っています。
経営手腕についていろいろと述べるべき事はあるのでしょうが、私が注目したのはそれだけではありません。
安田さんの社長としての心情が印象に残りました。

ところどころで、安田さんはこういったことを語っています。
「社長が嫌なことは社員にもさせたくない」
「自分たちがイヤなことをアルバイトに押しつけて、それで成り立っているビジネスというのもいかがなものか。」

社長が嫌なこと=電話営業をやめ、ブランディングで顧客に選んでもらう手法をとったり、徹底した福利厚生で、社内バーを作ったり、給与水準を上げたりしてきたということでした。

「自分が嫌なことを社員にさせてたくない」というのは私も強く共感します。

 

税理士業務でも

私が独立したときも、「自分が嫌なことを社員にさせてたくない」という気持ちがありました。

業種の特性上、電話営業や飛び込み営業はやりませんが、税理士業務でも、やりたくない仕事はあります。

社員やアルバイトを雇って、任せれば済むことですが、なんとなく引け目があるのです。
嫌なタイプのお客様も、社員を担当者にして任せきれば、収入は入ってきますし、利益は生まれます。
「会社経営ってそういうものだ!」っていえば済むことでしょうが、なんとなく割り切れずに今に至っています。

うちの事務所の体制では、仮に税理士を目指している方を採用しても、お客様の担当者として活躍してもらうことができません。
顧問契約の方針も、それを前提としたものではないからです。
自分の方針と異なるお客様でも、どんどん契約して、顧客を増やし、雇ったスタッフに任せていくというのも1つの方法論です。
しかし、それでは「自分が嫌な仕事」も含めてとらなければいけないことが多いでしょう。
お客様がどういう方であるか、仕事の内容に関わらず契約をするということになります。

現在、良くも悪くも、税理士事務所としてご契約というよりも、私個人とのご契約をいただいています。(たぶん(笑))
ご契約いただいた後に「担当者の○○です」と担当者に対応してもらうことにも抵抗があるのです。

本来は、税理士になりたい方を雇ってサポートしつつ経験を積んでいただき、税理士としての独立のステップの場を作ろうと思っていました。
しかし、いろいろ難しい面もありますので、今は個人的に会ったり、メルマガを発行したりと別の形のサポートを試みています。

 

 

社長のつらさ

安田さんが行った社員への投資は、それはそれで1つの方法だと思います。

(「でも会社をつぶしたら意味がない」という意見もあるでしょう)

私が普段の業務で経営者の方々と接していて、社長のつらさ・苦しみを見てきていますが、その中でも
「社長と社員の2つの立場を経験していること」
は非常につらいことのような気がします。

社員のときには、給料が低い、責任ももたせてくれない、社長は遊んでばかり・・・・・・といろいろな不満があるでしょう。
社員になったときに、それらを解決して理想の会社を作ろうと思うことが多いです。

しかし、いざ社長になってみると、そうはいかないことが山ほどあります。
給料を多く支払いたくても、資金繰りを考えると不安になったり、いざ高い給料を支払っても、社員にはまだまだ足りないと思われたり、社員には話せない重大な決断をしていたり、経営者ならではの悩みはつきないです。

(もちろん、社員のことをこれっぽちも省みない経営者もいますが)

社員のときは社員の視点しか持っていませんが、社長になると社員の視点に加えて社長の視点を持つことになります。(子供が親になるようなものかもしれません。)
究極的には「社員の視点」を捨て去らなければ社長として成功しないのかもしれませんが、私がお付き合いさせていただいている社長の皆様は適度なバランスで「社員の視点」をお持ちなような気がします。

一見何も考えなくて、気楽なように見えて、社長は大きな重圧に耐えています。
その本音を語った本書は、会社員の方も、起業を考えている方、そして社長、それぞれの立場で違ったとらえ方ができる本だと思います。

社長ではなくなったときに、安田さんが語った一言は非常に重いです。

社長ではなくなって、大きく変わったことが二つある。
資金繰りをしなくてよくなったこと。
そして、最終決定をしなくてよくなったことである。

 





【編集後記】
昨日、久しぶりにバイク(自転車)練習。
42kmを走ってきました。
ランに集中していた効果も少しあるようで、結構スピードは維持できた感じです(^_^)

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