カメラ、特にカメラとレンズが別の場合、経理で気をつけたいことについてまとめてみました。
カメラ・レンズの勘定科目
デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼、レンジファインダー といったカメラは、レンズを交換できます。
その用途に合わせてレンズを交換できるので便利です。
お金はかかりますが。
そのカメラ、レンズを経理するときの勘定科目について、まとめてみました。
消耗品費or工具器具備品
カメラ、レンズを経理する場合の勘定科目は、一般的には「消耗品費」です。
パソコン関係と同じものと考えておきましょう。
ただし、消耗品費として経費に落とせるのは、30万円未満のもののみです。
(10万円以上30万円未満のものは年間300万円という限度があり、申告のときに明細をつけなければいけません)
30万円以上の場合は、一般的には「工具器具備品」というもので処理します。
これらの違いは
・消耗品費はその年(年度)に全額経費になる
・工具器具備品は、カメラ・レンズの場合、5年かけて経費にする
というものです。
税金が少なくなるのは、「消耗品費」。
だからこそ、30万円未満という条件があります。
40万円のカメラの場合、
・個人なら、原則として5年かけて、8万円ずつ
・法人なら、原則として5年かけて、16万円、9万円、5万円、4万円、4万円(金額は約)
と経費にします。
個人も届出書を出せば、法人と同じように減価償却(定率法)することはできますが、何もしなければ均等に減価償却(定額法)です。
レンズも同様の方法でやります。
カメラはもちろんレンズを5年以上使うという方も多いでしょうが、ここは法律上の計算として割り切って5年で経費にしていきましょう。
一方で、パソコンで30万円以上だと4年で経費にしていきます。
これはちょっと長いと思いますが、実態に即してないというのは法律の常です。
勘定科目の工夫
もしカメラ関係の勘定科目が、「消耗品費」、「工具器具備品」に分散していると、会計データを見たときにカメラにいくら使っているかというのがパッとわかりません。
ましてや、「消耗品費」は損益計算書(P/L)、「工具器具備品」は貸借対照表(B/S)。
別の表にあるのです。
(一括で経費にするものは、損益計算書、ちょっとずつ経費にする、または経費にしないものは貸借対照表と考えていただければ)
こういったときは、いずれの場合も同じ勘定科目、たとえば、「カメラ」にしておいて、カメラ関係はそこに入れるというのも1つの方法です。
そうすれば、ひと目で、カメラ関係にいくら使っているかわかります。
決算のときに、その「カメラ」を「消耗品費」として(日頃の経理と決算書は表示方法を変えることができます)、「工具器具備品」に該当するものは振りわけましょう。
(具体的には、決算整理仕訳で、工具器具備品/カメラと処理します。後にデータ分析するときは、「カメラ」で検索しましょう)
ひと手間かかりますが、こういう方法もあるということで。
これ、パソコン関係でもできます。
カメラとレンズ、30万円の判断
では、この30万円というのもどう判断するか。
カメラとレンズは別にするのか一緒にするのか。
法律ではなく、通達といわれる「実際にはこうしましょう」というものでは、 「通常1単位として取引されるその単位」で30万円かどうかを判断すべしとあります 。
例としてよく挙げられるのは、応接セット。
ソファーとテーブルで一体なのでソファーが、たとえば12万円、テーブルが20万円だったら、合計32万円で判断し、工具器具備品にしなければいけない、つまり、ちょっとずつ経費にしなければいけない(減価償却)ということになるのです。
ソファー12万円を消耗品費、テーブル20万円を消耗品費にはできないと。
それぞれでは、機能しないからです。
カメラ・レンズはセット?
ではカメラとレンズはどうなのか。
カメラだけあっても意味はありませんし、レンズだけあっても意味がありません。
(きれいで、それぞれを眺めているだけで満たされますが)
カメラとレンズは、1つとして判断すべきという考え方もあるでしょう。
しかしながらカメラ本体だけを買って、レンズを増やすということもあり得ます。
それらが、すべて一体のものとみなされるのかどうか。
カメラとレンズを合わせて30万円未満であれば問題ありませんが、30万円以上であるならそこが税金上問題になる可能性はあります。
たとえば SONY のカメラ、α7Ⅲは、本体が24万円。
(説明簡略化のため、おおむねの数字をつかいます)
これにレンズ(SEL50F14Z。私が買うとしたらコレ)を買うなら、18万円。
それぞれで考えるなら、カメラ24万円、レンズ18万円を「消耗品費」で経費にできます。
30万円未満ですので。
合計なら、カメラ+レンズで24万円+18万円=42万円ですなので、「工具器具備品」で経費になるのは減価償却で、約21万円が経費、差額は21万円(税金は6万円くらいの違い)です。
別々の経理でいいのかどうか。
「一緒に買わずに別々に買えばいい」「レジ精算を分ければいい」という話ではありません。
買い方を変えるだけで、一括で経費にできるかどうかが変わる、税金が変わるというのはそもそもおかしい話です。
一方で、Sonyのα7Ⅲには、レンズが付いているセットもあります。
こちらは 255,930円。
30万円未満なので問題なく、消耗品費として一括で経費にできます。
この場合、レンズを別に買ったら、セットして考えるのかどうか。
単体だと使えないのであれば分けて経理できないというのは、そもそも無理があるものです。
ノートパソコンにつなげるディスプレイはパソコンとセットで経理しなければいけないかというと決してそうではありません。
ディスプレイ単体では機能しないのですが、別物として経理することが多いものです。
パソコンで使うケーブル、マウスもそうでしょう。
「ディスプレイ、ケーブル、マウスは他のパソコンでも使えるから別物と考える」という理屈であればレンズにもその理屈がとおります。
レンズは本体を変えても使えますので。
アダプターを使えば他のメーカーのカメラでも使えます。
こう考えるとカメラとレンズは別のもので30万円未満かどうかを判断すればいいのでは?思うわけです。
裁判での判断
過去の判例で、こういった事例が争われたものがあります。
・防犯カメラのテレビ、カメラなどを別々に経理していた
・税務署側は、防犯カメラ一式を合計して経理すべし
裁判所の判断は、「テレビもカメラもそれぞれで取引単位となるだから、別々でいいんじゃね」というものでした(2004年2月4日 さいたま地裁判決)。
一緒に使うから、セットで買うかは関係なく、それぞれが取引単位、1つの商品として売っているなら別々で経理と考えるなら、ノートパソコンとディスプレイ、そして、カメラとレンズにもあてはまります。
そもそも通達(これ自体に法的要素はありませんが)にも、取引単位とありますし。
カメラ、レンズが単体で取引されていれば、別々の経理であり、その他、クリップオンストロボ、レンズフィルター、レンズフード、SDカード、三脚、充電池、外付けファインダーなどは、その単位ごとに判断(消耗品費)というのが私の考えです。
ただ、その間をとるなら、カメラとレンズの1つは、セットにしておくというのもリスクヘッジになるでしょう。
カメラとレンズのセット販売の場合も、それぞれが別々に売っているので、別で経理できるとの考えもありますが、セットであるがゆえに安いという要素もあるので、1つで考えたほうがいいかと。
まとめると、
- セット販売であればカメラとレンズをセットにする
- カメラとレンズが別売りなら、別々で経理する、ただし、1つはセットにしておく
ということになります。
これは私の見解なので、税務署というより税務署の方の個々の判断にもよりますので、その辺をご承知おきいただければ。
「税務調査があったけど大丈夫だった」というのは、あてになりません。
見なかっただけのこともありますし、個人の判断にもよりますので。
・こんな高いカメラ必要なのか
・レンズは、こんなにいっぱいいらないでしょう
と、「経費じゃないんじゃないか」といわれる場合もありえます。
そういったときに、きちんと論理立てて説明できるかどうかが大事です。
カメラに限らず。
カメラ、レンズともに30万円以上なら、どちらも工具器具備品になり、シンプルですが。
ただ、他のレンズがすべて30万円以上とは限らないでしょう。
税務調査で指摘されたら
もし、税務調査で指摘されたらどうなるか。
たとえば 先ほどの例で、24万円のカメラと18万円のレンズをそれぞれ消耗品費としている場合、これは一体だから42万円で減価償却すべきといわれたとすると、こうなります。
(法人で、買った翌年に指摘された場合)
・本来は、1年目に21万円(減価償却。概算)しか経費にできない
・現状は、42万円(24万円+18万円)を経費にしている
・これらの差額の21万円は、その年の経費にならない
ということになります。
ざっくりと6万円ほどの追加の税金と、3万円ぐらいの罰金です。
このうち6万円の追加の税金は、もともとその年の分として払うものを先に払うだけなので、実質的な負担は、ほぼありません。
3万円の罰金が実質的な負担と考えておきましょう。
もちろん税務調査が入って指摘されたという場合です。
過去に間違っていた場合、修正するのが原則ですが、金額にもよるでしょう。
「消耗品費」か「工具器具備品」かは、5年で、損得もなくなるので。
(税務調査ではそうはいきませんけど)
カメラ・レンズが中古かどうか
カメラ・レンズを工具器具備品、資産にするとき5年にわたって経費にする減価償却をします。
ただし、これは新品の場合のみです。
中古の場合は、5年という年数が当然短くなります。
(カメラは中古でも価値が落ちない。5年より短くならないという現実はこの際置いておきましょう)
カメラやレンズは、中古で買うことも多いかと思いますので、中古の場合は減価償却の期間が短くなると考えておきましょう。
その年数は、合理的に見積もるのが原則ですが、合理的に見積もるなんてなかなか難しいので、計算式があります。
次のとおりです。
・5年たっている中古
→5年×20%=1年と計算しますが、最低でも2年という年数なので2年で経費(減価償却)
・5年のうち何年かたった中古
→たとえば3年たっていれば、(5年-3年)+3年×20%で計算し、2年となります。
ちょっとややこしいのですが、会計ソフトにも中古で減価償却を計算できる機能がありますのでそれで計算してみましょう。
ただ、そのカメラ、レンズが何年経過しているかがわかるかどうか。
発売年はわかるにしても、それが何年に製造されたかは、はわかりません。
実際は、発売年で考え、かなり前のものなら(10年とか。新品の販売が中止になって5年とか)、減価償却を2年、つまり2年で経費にしても問題ないでしょう。
2年での減価償却は、買った金額に1.000をかけます。
ということは、全額経費になるのです。
中古で買うなら、30万円未満になる可能性も高くなります。
ただし、新品で買うか中古で買うか、消耗品費になるか工具器具備品になるかということとは、別にカメラやレンズを選びましょう。
税金によって行動を変えるのは好ましくありませんので。
なお、分割で買う場合の経理はこちらの記事を参考にしていただければ。
分割で払った場合の経費の考え方。一括と分割、どちらが得か?
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■編集後記
ケーブルトレー(ケーブルを収納するかご)を買って取り付けて、スッキリしました。
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プリキュアの見過ぎか、ただ、ヒーローじゃないし……
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