無料の国税庁年末調整ソフトの現実的な使い方(2020年・令和2年年末調整電子化)

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2020年の年末調整より、「電子化」として、国税庁の無料ソフトを使うことができます。
その概要、使い方についてまとめてみました。
例のごとく微妙な仕上がりです。

※国税庁の年末調整ソフト by SIGMA fp

年末調整のIT化

年末調整というと、本来、紙、紙、紙の仕事です。
2020年から年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(以下「国税庁年末調整ソフト」)で、その年末調整をIT化できるようになりました。

紙を使わなくていい・保管しなくていい

国税庁年末調整ソフトを使うと、保険料、住宅ローン控除のデータを連動できるのです。
さらには、個人情報(住所、氏名、扶養親族など)をソフトに入力すれば、年末調整の書類に書かなくてすみますし、押印もいりません。
データを保管しておけばいいのです。

こういった用紙です。

 

2020年から、さらに変わってややこしくなります。
さきほどの紙は、全員必要で、この用紙を準備しなければいけません。
(ルール上は)
基礎控除という誰にでも関係あるものに関するものです。
さらには、保険料を払っていれば、もう1枚追加になります。

こういった用紙をプリントアウトして書く、またはPDFに入力して紙でとっておく必要がなくなりました。
(ルール上は紙で保管することになっています。税務署にその都度提出はしません)

ただ、いろいろと罠はあります。

 

別途、年末調整ソフト(給与計算ソフト)が必要

国税庁年末調整ソフトだけでは、年末調整が完結しません。
青い部分は、各従業員が準備するもので、その後、データを集めて、市販の年末調整ソフト(または給与計算ソフト)に取り込まなければいけないのです。

国税庁年末調整ソフトは、データを連動、入力するだけにすぎません。

各人で入力後、電子署名かパスワードをかけて、(通常の会社なら給与計算担当者等が)データを集めることになります。
電子署名は、マイナンバーカードとカードリーダーが必要なので、実質は、パスワードになるでしょう。

 

国税庁年末調整ソフトでつくられるのは、たとえば、こういった2つのデータです。
1というのはIDであり、その後にnopass.zip(パスワード保護なし)、pass.zip(パスワード保護)という2つのデータがつくれらます。

パスワードなしのほうは、社内のサイトといったログインして入るようなものがあれば、使えるというもので、基本的には、パスワード保護のファイルをやりとりしなければいけません。
(ルール上は)

中身はこんな感じです。
前述した、3つの書類がxmlという形式のデータで保管されています。

 

パスワード保護のほうは、

中身をメモ帳で開くとこんな感じです。
(CSVだったらよかったのにと思いますが)

これを市販の年末調整ソフト(給与計算ソフト)で取り込みます。
どのように取り込むのか、記事執筆現在ではまだわかりません。
社員の数が多いと、メールで送る→受け取る→添付ファイルを保存する→ファイルを取り込むという流れになりますが、まさかファイルを1つずつ取り込むということにはならないでしょう。

特定のフォルダに入れたら一括して取り込めるはずです。
たぶん。
残念ながら、RPAやマクロの出番のようなにおいがします。

受信メールの添付ファイルを保存していくのは手間なので、サーバーに入れてもらうというのが現実的でしょう。

パスワード保護のファイルを市販の年末調整ソフトで取り込めるのかも疑問です。

国税庁年末調整ソフトが、クラウドならよかったのですが。

マイナポータルで控除証明書が連動

保険等のデータは、連動はできますが、原則としてマイナポータル経由です。
マイナポータルとは、マイナンバーカードを利用したサービス。
(これだけで嫌な予感はしていました)

マイナンバーカードと、カードリーダーがなければ、連動はできないのです。
さらには、マイナポータルと保険会社のサイトとの連動設定をしなければいけません。
これがまたカオスです。

この連動に現状、対応しているのは、次の保険会社のみ。
住宅ローン控除も住宅金融支援機構のみです。

国税庁年末調整ソフトで、[マイナポータルから取得]、

認証画面へ進むと、

マイナポータルの画面になります。
(マイナポータルの設定も必要です)

 

ここで、マイナンバーカードを読み取ると、

エラーが。
民間送達サービスとの連携を設定しなければいけません。

マイナポータルの[もっとつながる]から、

連携するサービスを選びます。
保険会社等とつながるのは、[e-私書箱]というサービス。
またもや新キャラです。

e-私書箱で、マイナンバーカードを登録して、

アカウントをつくります。
Googleでもつくれるのは驚きです。

登録が終わると、

e-私書箱で、連携可能なサービスが出てきます。
ようやく連携か……と思いきや、

こんな表示が。
さらに保険会社のサイトで手続きが必要なのです。

アフラックはリンクもありません。

アフラックのほうをググってみると、申し込んで2~3日かかるとのこと……。

気を取り直して、第一生命のほうに行くと、情報を登録する画面が出てきます。

登録後、マイナポータルとか、e-私書箱とかの表示を探しますが、ありません。
ヘルプにもなく。

えいやっと、[生命保険料控除証明書を(再)はっこうする]をクリックすると、

小さくありました。
マイナポータルが。

クリックするとこういったサイトが。
さらに利用申し込みが必要です。
最初だけですので我慢でしょうね。

入力中、氏名を半角カナで入れさせられるのにもめげず、

申込完了。
ただ、「改めてメール送信します」とのこと。
すぐに使えるようにならないのはアフラックと同じようです。
(ここで折れて、娘と風呂に入りました……)

 

保険会社からデータをダウンロードして取り込める

マイナポータルの設定は、最初だけとはいえ、長すぎます。
これを各社やることを考えると、入力したほうが速いんじゃないかと。

マイナポータルで連動しなくても保険等データを取り込む方法もあります。
保険会社のサイトからデータをダウンロードできるのです。
マイナポータル対応でない保険会社でもダウンロードはできるところがあります。
メットライフとか。
(ただ、登録してログインしたらサイト自体にエラーがでて、折れました)

あんしん生命は、ダウンロードができないようです……。

マイナポータルで連動するか、保険会社のサイトから取り込めば、生命保険の証明書(はがき)を会社で保管しておかなくてもよくなります。
ただ、この手間を考えると……。

このデータダウンロードも、再発行コーナーにありました。
もう慣れてきました、保険会社サイトのクセにも。

ダウンロードしたデータを取り込むと、

無事取り込めました。

ただ、この方法の場合、毎年、各社のサイトからダウンロードする必要があります。
マイナポータルだと、連動設定をしておけば、一括で取り込めるのです。
今年、えいやっとやってしまうのも手でしょうね。

従業員それぞれに、マイナンバーカード(持っていない方が多いかと)を準備していただき、それぞれこの手続きをするの大変でしょう。

 

ソフト・アプリをインストール

国税庁年末調整ソフトは、
・Windows
・Mac
・Android
・iOS(iPhone)
で使うことができます。
ただし、パソコンならソフトをダウンロード、インストール、スマホならアプリをダウンロード、インストールしなければいけません。
これはこれで、1つの壁でしょうね。

インストールについては後述します。

事前の申請が必要

会社としては、国税庁年末調整ソフトを使って、紙の保管をなくすには、事前の申請が必要です。
で、電磁的……。

この申請をして、翌月末までに何も連絡がなかったら、翌月末に承認ということです。
(税務署の書類はだいたいそんな感じです。)

10月に出したら、11月末、11月に出したら12月末に承認ですので、タイミングに注意しましょう。

[手続名]源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請|国税庁

こういった用紙ですので、
・所得税法→一番上だけのチェックでいいのですが、まあ全部でも
・電磁的方法の種類は、1
・電磁的方法により~は、2
・その他事項には、次のように入れておきましょう。
メールアドレスをIDと使うシステムもあるので。

国税庁年末調整ソフトでは、このように、ID(社員番号。私しかいないので、1)、パスワードを設定します。

このファイルにパスワードがかかる話につながるものです。

 

市販ソフトと国税庁のソフト

市販ソフト、サービスでも、年末調整のIT化は可能です。
・申請を出す必要があるのは同じ
・マイナポータル連携はできないことがほとんど(いらんけど)
・クラウドのものもある
そして、
・有料です。

ざっくり調べるとこんな感じでした(税抜)、
・Smart HR(1人当たり月500円)→別途給与計算ソフト必要
・ジョブカン(1人当たり月400円。最低2,000円)→給与計算、年末調整機能あり
・マネーフォワード(会計とセット 月3,980円+1人当たり月300円)→給与計算、年末調整機能あり
・人事労務freee(ベーシック。月3,980円+1人当たり月500円)→給与計算、年末調整機能あり

※間違っていたらまた直します。
会計ソフトよりもわかりにくい料金体系が多くて……。
登録しないと料金が出てこないところもありますし。
結果的にどれも似たりよったりです。

これらもペーパーレス、紙の保管なしにできます。
が、freeeはまだ情報が出てなく未確定です。
チャットで聞くも頼りなく……。

弥生給与は、ペーパーレスなしという感じです。
やはり……。
「国税庁提供予定の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」からのエクスポートデータには非対応」との表記もありました。

市販のソフトを使ってペーパーレスにするかは悩みどころです。

国税庁年末調整ソフトのインストール

 

国税庁年末調整ソフトのパソコン版は、こちらからダウンロードできます。
このページからしてわかりにくいです。

年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)|国税庁

Windows版だと、ダウンロード後、このファイルを右クリックして、

[PowerShellで実行]をクリックすると、

 

こういった設定画面が開くので、警告をスルーしつつ、[開発者モード]をクリックしましょう。

その後、再度クリックして、このような画面でインストール完了です。
敷居は高いです。
各人にこれをお願いするのは……。

なお、Microsoft Store版も今後出るとのことです。
こちらだと、もっとシンプルになる可能性も。
Microsoft Storeって何?って感じかもしれませんが。

 

Macだと、やはりこのようなびっくりする警告が出ます。

 

MacのAppStore版だとすんなりいきました。

スマホ、iPhoneで試すと、ダウンロード、インストールはすんなりいきます

 

使い勝手も上々です。

 

最後は、データをメールで送ることができます。
が、開けないというトラブルも。
操作していてもおかしい挙動があり、まだまだバグがあるかもしれません。
(レビューにそういった記述も)

 

国税庁 年末調整ソフトの使い方

じゃあ、国税庁年末調整ソフトを使うかどうか。

マイナポータルはなしでしょう。
マイナンバーカードも必要ですし。

ひとり社長でご自身の分をやる分にはいいでしょうが。

現実的には、保険会社サイトとから取り込むか、

保険等は、入力しちゃうかでしょうね。
これだけでも、用紙最大3枚は使わなくてすみます。
用紙に記入、入力するよりも、国税庁年末調整ソフトに入れたほうが数倍楽です。
その結果を、給与計算ソフト(年末調整ソフト)に取り込めば、ペーパーレスはできます。

その前提でパソコン版を使って解説してみました。
作成をスタートして、

ひとりかどうかを選択します。
これは、会社で複数の方が、1つのパソコンで入力するのを想定しているものです。

氏名、住所、収入の見込み額を入れます。
この見込額というのは、結構難しいかなと。
把握されている方がどれだけいるのか……。

給与以外の所得がないなら、0を入れないとエラーが出ます。

その他情報を入力してIDとパスワードを設定しましょう。
(会社で従業員の方に入れていただくには、この辺の管理、指定をきっちりやらなければいけません。)

給与支払者(会社)の情報を入れます。
これは、担当者があらかじめデータをつくり、そのデータを読み込めば、自動で入力できるのですが、入力したほうが速いような……。

取り込むというのは、敷居が高いものですし。

作成する控除申告書、ここも難関です。

まず、通常は、令和3年分扶養控除等(異動)申告書をつくります。
令和2年分の年末調整なのですが、来年の分の書類にするのは、効率的だからです。
この書類には、
「その年の最初の給料を払うまでにつくって提出」
「もし年の途中で変更があったら提出」
というルールがあります。

令和2年の年末に、そのときの状況を令和3年分として出せば、
・令和3年の最初の給料を払うまでに提出
・令和2年の最新の状況(変更があっても変更後)
というルールを満たすのです。

結果的に、
・全員→令和3年分扶養控除等(異動)申告書、令和2年分基礎控除申告書
・年850万円超の給料の場合→所得金額調整控除申告書
・配偶者の控除をうける場合→配偶者控除等申告書
・保険料を払っている場合→保険料控除申告書
・住宅ローン2年目以降の場合→住宅借入金特別控除申告書
ということになります。

質問に答えて、自動的に選択してもらったほうがいいでしょう。

このように回答に応じて、書類を選択してくれます。
チェックも必要でしょうが。
(市販のソフトだと、差し戻しや足りないものの請求もできます)

保険料は、連動や取り込みをしないなら、入力して、証明書(はがき)もとっておかなければいけません。
ただ、前述の手間を考えると……。

最後に[電子データで出力する]を選んで、

マイナンバーは、すでに提出済みなら、入力する必要はなく、[マイナンバーは提供済み]を選びましょう。

 

最後に、パスワードをかけて、ファイルをつくります。

こういったファイルができるので、通常は、passのほうを使って、年末調整ソフト等に取込、そのデータをとっておくことになります。
(7年)

ひとり社長なら、やるかどうかは微妙なところです。
従業員が多い場合、運用がうまくいけば、ペーパーレス、効率化になるかと。
顧問のお客様には導入を考えています。

マイナンバーカードを使った連携は、やっぱりなしでしょうね。

動画もアップしました。

 



■編集後記
昨日は、書籍の打ち合わせ。
最後の詰めではあるのですが、今日にかけて、もうちょっと手を入れました。

「1日1新」
とあるソフト

■娘(3歳6ヶ月)日記

最近よく歩いていたのですが、また怪しくなりました。
「つかれたー」としょんぼりし、だっこすると元気になるという感じで。

 

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