「起業とお金」セミナーで話した「起業するなら知っておきたい税金・会計8つの知識」

昨日、とある勉強会つながりで、起業セミナーの講師をさせていただきました。
「起業とお金」というテーマです。
その中で話した、「起業するなら知っておきたい税金・会計の知識」をまとめました。
時間も限られていましたので(90分)、「今選ぶならこれ」というものを8つ話しています。
IMG 7788

個人?法人?

起業には大きく分けると、個人でやる場合と、法人でやる場合があります。
個人だと手続きコストがなく、維持コストもありません。
法人だと登記という手続きがあり、株式会社なら30万円ほどかかります。利益がマイナスでも、毎年7万円の税金を払わなければいけないので、維持コストもかかります。一方で、個人よりも節税の幅は広がりますので、ある程度の利益(年500万円程度)が出るようになったら、個人(個人事業主)から法人にする方法もあります。

なお、株式会社ではなく合同会社にすれば、手続きコストは、10万円ほどになります。

税金上の取り扱い、節税策は株式会社と変わりません。ただし、合同会社という名称、代表取締役ではなく、代表社員という名称になる点がネックとなる場合があります。
スクリーンショット 2013 04 08 7 31 53

手続き

事業を始めたら、税務署に届出書を出す必要があります。
個人の場合は、「事業を始めた」日があいまいになりがちですが、「この日がスタート日」と決めてしまった方がいいでしょうね。
法人の場合は、法務局で登記をした日が、スタート日となります。

それぞれ、「青色申告承認申請書」という書類が重要です。
(その他の届出書は遅れても問題ないと言えばいえばないです。)

期限その他は、昔書いたこちらの記事を参考にしてください。
・起業時に必要な届出書・申請書 | EX-IT

事業をスタートしたら、1か月以内に、印鑑、謄本(法人の場合)を持って、所轄の税務署にいくのが一番早いかもしれません。
所轄の税務署は、こちらで調べることができます。
http://www.nta.go.jp/soshiki/kokuzeikyoku/chizu/chizu.htm

節税とお金

起業したら、稼いだお金は、すべて自分のものというわけではなく、税金を払わなければいけません。


■スポンサードリンク
------※この記事は、投稿日現在の状況、心境、法律に基づいて書いています。---------

■スポンサードリンク


給料の場合、税金は前払いですが、起業すると、税金は後払いになります。

(期限は、個人だと3月15日、法人だと決算月の末日から原則2か月以内)
余計に心理的負担が大きいのです。

そのため、税金を減らそうと無理な節税もしてしまいますが、節税をするには、ほとんどの場合、お金が出ていくことを忘れてはいけません。

例えば、10万円の税金を減らそうと思ったら、25万円の経費(お金が出ていく)が必要なのです。

・税金が10万円減る→10万円の支出が減る
・25万円の経費が増える→25万円の支出が増える
となり、差し引き15万円が出て行ってしまいます。

必要なものなら、この15万円の支出は意味あるものですが、そうでない場合、何もしなかったときと比べてムダに5万円のお金が出て行ってしまうことになるのです。

スクリーンショット 2013-04-08 9.28.02

利益とお金

利益とお金の2つの視点から数字を見る必要があります。
利益が出ていてもお金がない状態もあり得るからです。
いわゆる黒字倒産ということになってしまいます。

「回収するまでが売上」です。

売上100万円の請求書を出しても、入金されなければ意味がありません。
その入金がないうちに、経費40万円を支払っていては、お金はどんどん減ってしまいます。

■スポンサードリンク

しかも、税金は、利益(売上ー経費。この場合は60万円)で計算するため、実際にはお金がないのに税金を払わなければいけないという状況もありえます

利益は、会計上計算されてもので、実体はありません。が、お金は実体があり、いわば現実世界です。

現実世界の税金は利益から計算します。
2つの世界を行き来し、2つの側面から数字を考える必要があるのです。

スクリーンショット 2013 04 08 8 09 12

経費の基準

「○○は経費に落ちますか?」はもっとも多い質問です。
経費の基準は、法律で明確に決められているわけではありません。
法人だと、

・収益に係る売上原価などの原価
・販売費、一般管理費その他の費用(債務の確定したもの)
などと決められているだけです。

自分自身の判断基準を持ち、証拠(領収書、請求書、振込履歴等)と理由(なぜ必要か?というストーリー)を備えておく必要があります。
税務署や税理士によっても判断基準が大きく異なりますし、金額の感覚にもずれがあります。

起業したら、この基準を少しずつ形作っていくようになります。
絶対「経費」にしないものを明確に決める | EX-IT

決算期

個人の場合は12月が決算期(1月から12月が1つの区切り)ですが、法人の場合は、どの月でも大丈夫です。
3月決算は全体の20%といわれていますが、必ずしも3月にする必要がありません。

セオリーとしては、
1 売上が少ない月(売上を読める月)
2 設立した日の前月
というものがあります。

1は、適切な節税を行うためです。
売上多い月を決算にすると、どのくらい節税をすればいいかが事前にわかりません。
だいたいこのくらいの売上とわかれば、それにあわせて事前に節税策をとれます。

2は、消費税の関係です。
後述する消費税が免税となる期間は、2期であり、2年ではありません。
(資本金が1,000万円未満で一定の条件なら、消費税は免税です)
例えば、今日が設立日で4月決算にした場合、免税期間は1か月+1年です。

スクリーンショット 2013 04 08 8 25 03

3月決算にした場合、2年となります。

スクリーンショット 2013 04 08 8 25 11

ただし、3月が売上の多い月なら、1と2の両方を考慮して、2月を決算月とするのがいいでしょう。
この場合、免税期間は11か月+1年となります。
スクリーンショット 2013 04 08 8 25 16

消費税

消費税は、売上に対するものから費用に対するものの差額を納税します。

売上が2,100万円で費用が525万円、給料などが1,000万円なら、

・売上に対する消費税 100万円
・費用に対する消費税 25万円(給料、社会保険料の会社負担分、保険料、税金などは消費税がかかりません)

で、納税するのは、75万円(100万円ー25万円)となります。

この納税義務がない、つまり免税の期間があるのです。

個人の場合は、2年間、法人(資本金が1,000万未満に限る)の場合は設立から2期間です。
ただし、個人、法人ともに平成25年から、前年(前事業年度)の売上高及び給与支払額が1,000万円超の場合は免税とならない制度が導入されます。
売上高か給与支払額が1,000万円を超えてなければ大丈夫です。

消費税は節税しにくいー消費税のしくみと減らす方法 | EX-IT
前年(前事業年度)の売上高(又は給与支払額)が1,000万円超の場合は免税とならない制度が導入されます。 …

役員報酬

個人の場合は、自分に給料を払えません。
個人と個人事業主は一体と考えられているからです。

法人と個人は全く別個のものですので、法人から個人(自分)へ給料を支払えます。
この給料(役員報酬)を出すのが節税の王道なのです。

役員報酬を出さない場合、法人の利益(実際は「所得」といいます)に税率をかけて税金が計算されます。
個人事業主はこの形式です。
スクリーンショット 2013 04 08 8 45 09

役員報酬は、社長個人の収入となりますが、会社の経費でもあります。
当然、経費を差し引いた利益で税金を計算するのです。
会社から自分へお金をうつすこと(社会保険料や所得税などを引きます)で、法人の税金を減らすことができるのです。

スクリーンショット 2013 04 08 8 45 19

役員報酬には、個人で所得税などがかかりますが、役員報酬からさらに経費を引くことができます。
年収500万円だと154万円の経費、年収1,000万円だと220万円の経費です。
この経費は特殊でお金を払ってなくても認められます。
非常においしい経費といえるでしょう。
その他、健康保険、年金なども引けます。

スクリーンショット 2013 04 08 8 45 41

一般的には、上の図の青い税金(法人に対する税金)とピンクの税金(個人に対する税金)の合計が最適になるように役員報酬を決めます。

1人で起業して会社を作ると、自分で自分の給料を決めるのです。
ただし、この役員報酬は原則年に1回しか変更できません。
変更のタイミングは、事業年度がスタート(3月決算なら4月)してから3か月以内です。
これ以外で、増やしたり減らしたりすると、経費として認められません。
(特段の事情があれば減らすことはできます)

法人の利益が増えてきたときに、「(法人の)税金を減らすために、役員報酬を増やそう!」とするのを防ぐための法律です(^^;)
同様の理由で、役員へのボーナスも認められません。

このしくみが決算期の話と関連します。
3月に売上が上がる会社が3月決算だと、決算間際にできることは限られます。
スクリーンショット 2013 04 08 9 10 39

2月決算で3月スタートなら、3月、4月、5月の売上、利益を見てその期の役員報酬を決められるのです。
こうすると、税金を最適化できます。
スクリーンショット 2013 04 08 9 11 42

この観点から、決算期を変更することもあります。
変更にはコストはかからず、書類を作り、届出書を出すだけです。

ーーーまとめーーー
昨日もいろいろと話、今日もいろいろと書きましたが、起業してからでないと実感がわかないかもしれません。
「起業後にいろいろと考えなければいけない」くらいで考えていただいてもいいと思います。
起業すると、売上を上げる、攻めの部分に当然力が入り、こういった守りはおろそかにされますので、意識だけはしておいてください(^^)

起業したら、起業が決まったら、本来はプロに相談するのが一番です。
相談であって、決して顧問契約ではありません。
顧問だとコストも高くなりますので、まずは相談してみるのをオススメします。

正確には、相談と言うよりも、自社の数字や事例を元に、税金・会計の知識をレクチャーしてもらうものと考えた方がいいかと思います。
(顧問前提の相談しか受けないか、有料で相談のみ受けるかは確認した方がいいでしょう)

本も参考にしていただけると、うれしいです。

起業に関して税理士がよく受ける質問10 | EX-IT

・起業のコストー手続きにかかるコストー | EX-IT

起業セミナーの準備で考えてみた「起業について改めて重要だと思う3つのこと」 | EX-IT





■スポンサードリンク
【編集後記】
3月に受験した世界遺産検定、認定証が来ました。点数は84点。
平均点が77.2点だったことを考えると、もうちょっと取りたかったところです(^^;)
次は9月に2級を受けます。




■スポンサードリンク


■ブログEX-ITの購読 →feedlyを使って無料で読む
→Twtterで読む
Facebookで読む

1日1新 Instagram
井ノ上陽一のVALU
■著書
ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!
フリーランスとひとり社長のための 経理をエクセルでトコトン楽にする本
新版 ひとり社長の経理の基本
毎日定時で帰っても給料が上がる時間のつかい方をお金のプロに聞いてみた!
『ひとり税理士の仕事術』
『フリーランスのための一生仕事に困らない本』
『社長!「経理」がわからないと、あなたの会社潰れますよ』
『そのまま使える経理&会計のためのExcel入門』