井ノ上陽一版『税理士って?』。税理士の資格をとるまでの苦行・とってからの苦行。

日本税理士連合会が、学生向けに『税理士って?一生の仕事を探すなら』というパンフレットを出しています。
私も、税理士になるまで、独立するまで、どんなことが必要でどんなことを考えてきたかを本音でまとめてみました。
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※宮崎の実家にて DSC-RX100M3

税理士は安定した仕事?

『税理士って?』というパンフレットは、日本税理士連合会が作成し、HPでも配布しています。
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http://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/prospects/zeirishikai_pamph_160201.pdf

HPより。

日本税理士会連合会は大学生などの学生向けに、職業としての税理士の魅力を紹介するパンフレット「税理士って?一生の仕事を探すなら」を作成しました。
パンフレットでは、税理士の仕事や資格取得への道、税理士の1週間のスケジュールについて紹介しているほか、現役税理士の声、若手税理士へのインタビューなど、さまざまな角度から税理士の魅力を追求する内容となっています。
ぜひ、ご一読ください。

税理士の受験者は年々減っているため、税理士の魅力をアップし、若い税理士を増やそうという動きがあります。
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税理士は、安定した仕事といわれることが多い一方で、受験者数が減っているのは魅力がないからでしょう。
むしろ「安定」でもありません。

税理士になるのは簡単ではなく、税理士になったからといってバラ色でもないのです。

税理士になるまでは苦行の道・税理士になってからも苦行の道

税理士資格をとるまでが大変

税理士資格を取るには、
・5科目に合格する
・3科目に合格し、2科目は、大学院に通い免除してもらう
・税務署に一定以上勤務する
といった方法があります。
大学院に通うと行っても2年間かかりますので楽ではありませんし、否定はしません。
税務署勤務であれ、免除であれ、試験合格であれ、あくまで資格ですので、資格取得後に何ができるかが大事です。
その他、会計士や弁護士の資格をもっていれば、申請すれば税理士登録できます。

割合としてはこんな感じです。
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現実的にいうと、5科目合格するか、3科目合格+2科目免除になります。
問題は、これを「食べていきながら」やらなければいけない点。


------※この記事は、投稿日現在の状況、心境、法律に基づいて書いています。---------

大学受験のように、試験勉強だけに専念するわけにはいきません。

「税理士試験は、1科目ずつ受験できるので社会人でもとりやすい」
「働きながらでもとれる資格」
といわれていますが、嘘です。
専門学校や転職サイトがあおっているだけに過ぎません。
少なくとも私は苦戦しました。

1年に1科目といっても、確実に合格しても5年間かかります。
もし不合格だったら、かんたんに1年のびるわけです。
試験を受ける社会人の1年は大きく、人生のイベント(結婚や転職)も多くそれらとともにこなさなければいけません。
何よりも遊びたい盛りで、友人が遊んでいる中でもくもくと勉強しなければいけないのです。

私が受験勉強していたのは、2000年5月から2003年8月。
この期間(※)、専念しているときは9時か21時まで(当時早起きはできませんでした)、働いているときは、平日なら通勤、ランチ、休み時間、仕事の合間+仕事の後3時間から5時間、休日なら9時から21時まで勉強していました。

学校のある日だけ早く帰る、試験の前だけ集中して勉強するなんてことで受かるほど甘くありません。

仕事をしているときは、職場のストレスや嫌みもあります。
まだ私は残業のないところを選んでいたのでよかったのですが、そうでなかったら絶対に合格してなかったでしょう。
(残業がなければ、ストレスにも多少耐えられます)

さらに問題は、いい職場がないところ。
いい職場は人が辞めません。よくない職場は人がころころ変わります。
今も昔もブラック税理士事務所は多いです。
税理士になるまでの修行の場として、「働かせてやってる」という感覚のところもあります。

その戦いもしつつ、勉強もしなければいけません。

「税理士事務所が安定とは言えない」という状況は勉強する環境、働く環境にも影響しています。
単価が下がり仕事量だけ増え、受験生への負担も増えているのです。

お金の問題との戦い

受験中に
・実家にいる
・援助がある
・貯金がある
ならまだいいのですが、お金もなんとかしなければいけません。

私は、試験を志したときに貯金が多少あったので、なんとかなりました。
(いざというときにお金は貯めておくべきです)
当時330万円あった貯金で、PC(20万)、学校代(2年間で53万円)を出し、目減りした残高でスタート。
当時、ひとり暮らしでした。
専念期間は当然徐々に残高が減っていきます。

1年目は3ヶ月の勉強のいちかばちか臨んで玉砕・・。
2年目(実質1年目)は、3科目受験で、1科目は不合格。。。
次の年は、手応えがあり、「専念すれば受かるかも」と4月に仕事を辞めて専念。
当然残高の減りは早くなります。

次の転職はうまくいかず(まあ、前の仕事7ヶ月で辞めてますから・・。そのリスクもおりこみずみで辞めました)、なんとか10月28日に決定。
そのときの残高は34万円ほど。
結構危なかったです。
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学校代も2年で53万円。私は4回受験しているので、プラス12万円ほど払っています。
(2年コースを申し込んでいると割引もありました)
今は、試験のボリュームアップのせいか値段も上がっていてTACで2年コースは70万円ほどです。
この期間で受かればいいのですが、不合格となると学校代もかかります。
科目によりますが20万円くらいです。
この学校代が惜しくて独学にすると合格確率が落ちるという負のスパイラルには気をつけなければいけません。
何よりも勉強する気力が続かないのが問題です。

また、税理士業界は給与水準が高くありません。
これは、「雇ってやってやる」「教えてやる(教えてくれないけど)」というスタンスがまだまだ多いこと、人件費を下げないと利益がでないビジネスモデルということも影響しています。
私が28歳でこの業界へ未経験で勤めたとき、額面20万円+ボーナス2ヶ月でした。ボーナスも基本給10万円を基準なので、10万円です。

その後、
・29歳で税理士事務所に転職して額面30万円、年収360万円くらい。
・31歳で税理士資格をとった時点で年収420万円くらい
・32歳で企業に移って480万円〜580万円くらい。
・33歳でふたたび税理士事務所に戻って500万円〜550万円
くらいでした。
残業しない主義、残業代をもらわない主義なというのも影響しているかとは思いますが、それほど多くはないでしょう。
資格取得のための勉強の対価とは思えません。

大手に勤めれば、残業込みである程度もらえるかもしれませんが、それでも600万円〜800万円くらいになる可能性が高いです。
「平均年収いくら」というのはあくまで平均。
税理士の年齢別構成(平均年齢60歳以上)をみれば、20代から40代の人が平均を気にしても意味はありません。

独立するまでも独立してからも、お金を目的とするなら税理士を目指さない方がいいでしょう。
確かに儲けている人はいますが、それは多大なる犠牲の上になりたっています。
人件費を下げ、一定の給料でできるだけ働いてもらえばトップは利益を得ることはできます。
それを望むかどうかです。
人不足、人材不足の傾向も強まっていますので、人を雇って任せて安泰というモデルもつくりにくくなっています。

税理士資格を目指すなら
・お金の問題を解決する
・職場(ストレスがあっても残業がないところ)を選ぶ
・本気で勉強する
ということが大事です。

【関連記事】受験から10年、改めて考える税理士試験。合格できた要因と試験脳の危険性 | EX-IT
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【関連記事】税理士として独立するために必要な戦略ー税理士試験合格・実務経験証明取得・独立時ー | EX-IT
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苦労した果てにまた苦労

苦労してようやく資格をとっても、まだまだ安泰ではありません。
独立するか、そのまま残るか、転職するかという選択肢がたちふさがります。
独立するときに嫌がらせも受けますし、そのタイミングも大事です。
受験の時と同様にお金も問題も解決しなければいけません。

資格をとる→仕事が来る→バラ色というわけではないのです。

資格をとる→仕事をとるをやっていかなければいけません。

税理士の年齢別の構成は次のとおりです。
(平成26年税理士実態調査より)
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仕事は既存の税理士に、がっつりつかまれています。
ただ、この年齢構成だからこそチャンスもあるわけで、やりようはいくらでもあるのです。

しかし、楽ではありません。
・確定申告の時期、息もたえだえになっている
・人を雇っても辞めてしまう(雇う側にも問題があります)
・作業ばかり増え、単価は低い
・社会的意義に影響されすぎる
・独立したはずなのに、時間がいくらあっても足りない
といったことも起きてしまいます。

なによりも、私も含めて税理士は独立するまで売り方、営業を知りません。
・がんばれば仕事が来る
・こつこつやっていれば仕事が来る
・仕事はあとからついてくる
といったことは、あてにはできません。
この点で、独立してからも苦行が続きます。

自分が何がしたくて、何をしたくないか、どんな人・仕事が合っているかはわからないからです。
ただ、独立するとすんなりとんとん拍子に行く方も20%くらいはいます。
私はうまくいかないほうでした。

税理士になるべきかのチェックリスト

税理士という仕事をどう考えるかによって、多少(かなり?)苦労しても目指す価値はあります。
儲かりそうだから、安定しそうだからと考えていると余計に苦労するでしょう。
手放しではすすめられません。
【関連記事】「税理士だけはやめておけ。」ー『声優魂』大塚明夫著よりー | EX-IT
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次のような点をチェックしてみましょう。

1 独立したいかどうか

独立したいなら、税理士という資格をとるのも1つの方法です。
もちろん資格なしの独立した方が、無駄がありません。
受験勉強や税理士事務所勤務(2年以上の実務経験が必要。経理でも可)のコストを回収するのはなかなか難しいです。

私は、公務員を辞めようと思ったとき、「独立もできる」資格を取ろうと考えました。
それは食べるためでもありますし、リスクヘッジでもあります。
不満に思うことも多く、変な上司に従いたくなかったので、解雇(解雇に追い込まれるような転勤、異動、仕事も含む)の可能性も高い、そんなときに「独立」というカードを持っておこうと思ったのです。

まさかそのとおりに、「独立」のカードを切るとは思いませんでしたが・・・
結局、数年後に、4カ所に勤め、行き場がなくなってなかば辞めさせられるようになって独立しました。

かっこいい独立もあるのですが、私の場合はかっこわるい独立です。
会社になじめなかったので、そうせざるを得なかっただけでした。

独立したいと思う方は、もちろん、将来独立というカードを持っておきたい方も税理士を本気で目指す意味はあります。

2 税金、数字の仕事をしたいか

ただ、独立したいといっても、どんな仕事をしたいかは重要です。
私は数字が好きだったので、これらを使える仕事をしたいと思っていました。
税金、数字を苦手にしている方に貢献したいという思いが源です。

そもそも大手をふって税金の仕事をするには、税理士しかありません。
(本来は税理士以外が税金の相談を受けることは禁じられています)

数字の話をするなら、税金はきってもきれない存在ですので、数字を仕事にしたいなら税理士を目指すのが1つの手です。

3 中小企業、フリーランスに貢献したいか

税理士のお客様は、中小企業、フリーランスがメインです。
もちろん、大企業の税務という仕事もできますが限られていますし、独立には向いていません。
独立を目指している方で、身近な方の役に立ちたいというなら、税理士が向いています。
逆に、大きな仕事で、かっこいい仕事がしたいなら向いていません。

税理士の仕事はかっこよくありません。
一緒に悩み、一緒に考え、一緒に苦労していくのが税理士だと思っています。

また顧問業務だけが税理士ではありません。
ひとりでできることは限られていますし、組織化しても限界があります。
このブログのように情報発信したり、本を書いたりして貢献する方法もありますので、ぜひ目指してみましょう。

4 話さない仕事と話す仕事の両方が好きかどうか

税理士は、人と話さない仕事だけで、固くてカチッとしているイメージです。
部分的にはそういうところもありますが、それだけでは食べてはいけません。

人と話す仕事も大事です。
人と話すのが好き、人と話さないで黙々と仕事をするのも好きという両面がある人なら、目指してもいいかと思います。

人と話すのが好きで、細かい仕事はスタッフに任せるというのも伝統的なスタイルです。
人と話さない仕事だけで、地道に仕事を増やしていくこともできなくはありませんが、話せることは武器になります。

5 新しいことが好きか

税理士は伝統的なスタイルで、古きを愛するところもありますが、新しい風が必要です。
税金、経理の世界はまだまだ古く、新しいことが武器になり得ます。
新しいことが好き、好奇心があるという方はむしろ税理士に向いているでしょう。

独立すれば自由ですし、どんな仕事をするかも選べます。
というよりも独立して自由ではない状態がおかしく、自分の行動を制限するのはいつだって自分です。
柔軟に考え、自分なりの税理士像を作っていくことができます。

これは、パンフレット『税理士って?」に載っているスケジュール例です。
いろいろつっこみどころはありますが、この姿を望むならそれでもかまいません。
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私の先週のスケジュールはこんな感じです。
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夜は基本的に仕事をしないのですが、セミナーを開催することもあります。
先週は、3つセミナーを開催しました。
月曜日に連載原稿の締め切り、火曜日に書籍原稿の締め切りもあり、やや変則的なスケジュールでした。
合間にレスパス行ったり、スイムやったりもしています。
ただ、人を雇わない主義で、この間は誰かに仕事を任せることはできないので、自己責任です。
誰かに任せていたら気になってかえって行けません。

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まとめ

税理士を目指したいという方は、その苦行の道をぜひ乗り越えていただきたいと思い、そのために、日々の姿をブログやメルマガ、書籍で見せているつもりです。

メルマガ『税理士進化論』

【関連記事】新刊『ひとり税理士の仕事術』。同業者に企業秘密を明かす3つの理由。 | EX-IT
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本当は、上からの働きかけも欲しいところです。
税理士の数を増やしたいなら、仕事環境の改善、名義貸しの撲滅は欠かせません。
先日もニュースで、名義貸し(茨城の税理士が名義を貸していて、資格のない人が商売をしていた)がありました。
【関連記事】税理士受験生の毎年減少をとめるのは、仕事環境の改善が必須 | EX-IT
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【関連記事】これからの税理士をつぶさないために、税理士の名義貸しのチェックを。 | EX-IT
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といってもなかなか進まないでしょうし草の根活動を続けるしかありません。
この確定申告期間中でも毎日ブログを更新し、新しい税理士像をみせてくれている税理士も増えてきました。
ネットでそういった税理士の姿を見ながら、税理士を目指すかどうかを決めてみてもいいでしょう。

毎日(又は平日毎日)更新し続けているブログです。
(おおむねアイウエオ順)
税理士川村一行事務所Blog – 残っていく仕事ではなく、続けていくために必要な仕事を【岡山・真庭のひとり税理士】
近日出荷-キンジツシュッカ- |
【すずき会計】~相続・起業・会社設立に強い小田原の走る税理士です! | 湘南・小田原の走る税理士 鈴木一彦税理士事務所
ブログ | 鈴木麻紗子税理士事務所
税務+会計+ときどきゴルフ | サラリーマン税理士が仕事と趣味のことを書いています
税理士田本晶子のブログ
関口勝也税理士事務所 | 経営のパートナーとしてお客様の事業を支える、日本橋にある個人税理士事務所
ディズニー好きなイクメン税理士
Balance | 仕事、税務、会計、ITもバランス重視で。
歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
向井栄一税理士事務所|三重県松阪市|40代の税理士です。
Makings Of 216 | 2月16日に確定申告しよう!(仮)
Moriya-blog | 税理士・公認会計士 守屋冬樹のBlog 税務 会計士 音楽 働き方を書いています





【編集後記】

昨日は、つくばへ。
先月からのお客様のオフィスへうかがい、打ち合わせをするためでした。
現場を見ると、やはり数字を見る上で役立ち、勉強になりますので、ありがたいです。

【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」

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井ノ上陽一のVALU
■著書
ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!
フリーランスとひとり社長のための 経理をエクセルでトコトン楽にする本
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